必要な物を買いそろえ、畑に畝を立てたりマルチを張ったりの準備も終わり、これから種や苗を植えるとなった時に考えなければならないのはどの苗をどの場所に植えるのか、という問題。
とりあえず畝に植えれば育つんじゃないの?
野菜に適した土に種を撒けば成長してくれるんじゃないの?
と思っている方がいるかもしれませんが、
野菜には同じ土地で連続して栽培しない方が良いものや、日当たりの良い場所を好むもの、逆に日当たりの悪い所の方を好むものがいたりと様々な性質を持っています。
ここでは苗を適切な場所に植えるために必要な知識を解説します。
連作障害と輪作
連作障害とは
毎年同じ場所に同じ作物を続けて栽培すると連作障害が発生して生育不良になり、収量・品質の低下、病気の発生が起きやすくなったりします。
なんでそんなことが起きるのさ?
と疑問に思うかもしれませんが、そもそも野菜にはそれぞれが好む肥料成分があり、そして土の中の栄養には当然限りがありますね。
毎年同じ場所に同じ野菜を植えることにより特定の肥料成分だけが無くなった土になると、必要な栄養素が吸い上げられなくなり、病気や生育不良が起きる、ということですね。
同じ作物を育て続けることで土の中の微生物も多様性のないものになってしまうので、土の中の環境悪化にも繋がり、病害虫発生の原因となります。
野菜には連作障害の出やすいものと出にくいものがあります。
連作障害の出やすい野菜は休栽期間が必要になるが、その長さは野菜によって異なります。
連作障害の出やすい野菜と休栽培期間目安
1年 | かぶ、ほうれんそう、みつば |
2年 | インゲン、キュウリ、キャベツ、白菜、ジャガイモ |
3~4年 | とうがらし、トマト、ピーマン、メロン、サトイモ |
5~6年 | エンドウ、ナス、スイカ、ごぼう |
出にくい | サツマイモ、カボチャ、ニンジン、大根、ネギ、玉ねぎ、にんにく、生姜 |
連作障害を防ぐ方法
①輪作を行う
輪作とは、同じ場所で、違った科の野菜を年毎に定期的に循環させて栽培することを言います。
輪作の基本は同じ科の野菜は連作しないということになりますが、同じ科の野菜とは?と疑問に思うかもしれませんので、表を置いておきます。
アブラナ科 | 白菜、大根、きゃべつ、小松菜、ブロッコリー |
ウリ科 | スイカ、メロン、カボチャ、キュウリ、ゴーヤ |
ナス科 | トマト、ナス、ピーマン、トウガラシ、シシトウ、ジャガイモ |
こちらの表に載っている野菜を植えた畝には次の年に同じ科の野菜を植えないように注意した方が良いでしょう。
その他の輪作のやり方としてイネ科、マメ科、根菜類に畑を分類し、一年ごとに畑を1個ずつずらしていくことも輪作の基本とされています。
イネ科の植物は藁などの繊維質な有機物が多く残り、マメ科は大気中の窒素を土の中に送る効果があり、根菜類は根により土を耕す効果がある。
1年目にトウモロコシを栽培したら2年目はインゲン、3年目は大根、といった感じですね。
とはいえ家庭菜園という限られた土地で輪作を行うのは中々難しい。
家庭菜園の定番であるトマトやナスを3~5年間場所を移しながら栽培するのは大変ですよね。
私は3年前にナスをどこに植えていたかなんてもう記憶にありませんよ。
そこで連作障害を防ぐための2つ目の方法を紹介します。
②接ぎ木苗を使用する
苗を買いに行くと、接ぎ木苗というものを目にすると思います。
接ぎ木苗とは、地上部になる植物(穂木)と、地下で根となる植物(台木)の茎をつなぎ合わせてできた苗のことを言います。
簡単に言うと上下別々の野菜苗を組み合わせた苗ということですね。
接ぎ木を行うことにより病害虫に対する耐性、暑さ寒さに強くなったりします。
野菜苗のおすすめ記事でも接ぎ木苗の良さは解説しましたが、接ぎ木苗は病害虫などに強くなる効果の他に、連作障害を軽減する効果もあります。
接ぎ木苗は手間をかけて苗を作っているので少々値段は高くなりますが、輪作を行う余裕のない家庭菜園ではとても重宝しますので購入してみると良いでしょう。
③毎年しっかり基本の土作りを行う
連作障害を防ぐ3つ目の方法は、毎年春にきちんと土作りを行うことです。
そんなの当り前じゃないか、と思うかもしれませんが、そもそもきちんとした土作りとは何か、という話になりますね。
連作障害の起きないよい土作りというのは、化学肥料に頼らず、有機肥料や有機質堆肥をしっかり入れることです。
有機肥料や有機質堆肥を入れることにより、土の中の微生物を増やすことで病原菌や害虫の発生を抑えることができます。
米ぬかで作ったぼかし肥料などを使用すると土の中の微生物を増やすと同時に足りなくなった栄養素も土に補給することができます。作り方はこちら↓
わたくし八猫宰相のようにさほど広くない畑(ダブルスのバドミントンコートくらい)を管理している場合は有機肥料・有機堆肥を使用することはさほど大変ではないですが、所持している畑が広ければ広いほど有機肥料・有機堆肥を使うのは難しくなります。
実際昔働いていた職場で農家さんが肥料を買っていくのを見てきましたが、9割くらいは化学肥料を買っていきます。
化学肥料は機械撒きに適していて、野菜に必要な成分がバランス良く含まれているので、有機肥料に比べて撒く手間も管理する手間もかからないからです。
農家さんは畑の面積が大きいので、有機肥料を使う手間をかけられないのが現状だったりするんですよね。
農家の現状を語りだすと話が長くなるので割愛しますが、とにか家庭菜園を楽しむ皆様は化学肥料に頼りきりにならず、有機肥料や堆肥をしっかり使って土を健康に保ちましょうね、という話でした。
※化成肥料が悪いのではなく、化成肥料のみを使い続けることで土の中の微生物の餌がなくなり、有益な微生物がいなくなってしまうので、使いすぎには注意しようということだよ。
コンパニオンプランツ
農薬を使わない家庭菜園をするならば覚えておきたいのが混植のテクニック。
野菜同士の特性を使用して、病気や害虫から野菜を守ろうという考え方で、例としてウリ科の植物(キュウリやスイカなど)のそばにネギ類を植えることで、ウリ科植物の病気を防ぐというもの。
ネギやニラの根からはアリシンという抗菌物質が分泌され、根圏に共生する細菌が抗菌物質を生成し、これがつる割れ病などの原因となる糸状菌(カビ)の発生を抑制する。
ウリ科の他に、トマトの萎ちょう病、イチゴの萎黄病などにも効果がある。
ウリ科にとってのメリットが大きいが、ネギ類の植物にとってもウリ科植物の葉が日陰になるので、日影が好きなネギ類は快適に成長できるという、相互にメリットがある組み合わせになります。
こういった相性の良い野菜を(組み合わせて植えることを)コンパニオンプランツといいます。
その中でも特に有名な植物としてマリーゴールドが挙げられます。
マリーゴールドは野菜のセンチュウ対抗植物として活用されます。
根から分泌されるアルカロイドにセンチュウを殺す作用が確認されているからです。
大根の表面に斑点状の障害を生じさせるキタネグサレセンチュウの防除、トマト、ジャガイモ、豆類などにも効果があり、まさに天然の殺虫剤といったところ。
花からも独特な匂いがするので、一部の害虫を遠ざける効果もあります。
コナジラミや一部のアブラムシ、蚊などもマリーゴールドの香りを嫌うと言われています。駆除するほどの強い力はありませんが、害虫を寄せ付けない効果が期待できます。
その他にも色々な効果のある組み合わせがありますので、気になる方はコンパニオンプランツについてまとめた記事がありますのでこちらをどうぞ。
野菜の日照適応性
野菜苗を植えるにあたって考えなければならないのは、その野菜の日照適応性です。
簡単に言うと、野菜が日光を浴びなければならない時間です。
植物はとにかく日当たりの良いところに植えれば良いんじゃないの?思う方もいるかもしれませんが、植物によって適切な日照時間は違います。
植物は日当たりの良い所を好む陽性植物、日当たりが悪くても耐えることのできる半陰生植物、日当たりの悪い場所を好む陰生植物に分けられます。
陽生植物(日照時間6時間以上)
トマト、オクラ、ナス、キャベツ、ピーマン、大根、きゅうり、カリフラワー、メロン、白菜、スイカ、豆類、カボチャ、玉ねぎ、トウモロコシ、サツマイモ、ニンジン、ごぼう、セロリ、トウガラシ、
半陰生植物(日照時間3~4時間)
里芋、じゃがいも、イチゴ、しょうが、春菊、ネギ、ホウレンソウ、アスパラガス、パセリ、サラダ菜、レタス、小松菜、かぶ、わさび
陰生植物(日照時間1~2時間)
みつば、しそ、みょうが、クレソン、せり、にら
陽性植物であるトマトを日陰に植えてはいけないということは想像しやすいですね。
半陰生植物や陰生植物は、日当たりの良い場所に植えても育つものもあります。
しかし陰性生物のシソやニラなど葉を食べる植物は、日光に当たりすぎることで成長しすぎて葉が硬くなり、食味が落ちます。
日陰に栽培した方が柔らかくて料理に適した葉を収穫することができます。
自分の畑は全体的に日当たりが良すぎる!という方は、コンパニオンプランツを参考に、陰生植物を陽性植物の陰に植えるなどして対策しましょう。
畑の作付け実例
ここまでの情報を基に私が実際行っている畑の作付け例を置いておきます。
私は面倒くさがりなので、マリーゴールドやネギ類などの便利コンパニオンプランツを多用するスタイルでやっています。
畑の周囲を囲むようにバンカープランツを配置します。
私は畑の全てに野菜の植え付けはせず、腐葉土や雑草堆肥、生ごみ堆肥などを作るための堆肥制作場所確保の為、空き地を用意します。
自分で堆肥を制作しない人は畑の全スペースに野菜の植え付けをして大丈夫だと思います。
上の図では割と綺麗に根菜、葉菜、ウリ科、ナス科、マメ科と分かれていますが、日当たりの都合上、輪作できないこともありますので、輪作と日当たりだったら日当たりを優先します。
連作障害のリスクは土壌をしっかり作ることで対策できると信じて…!w
今のところ連作障害のようなものが発生したことはないので一応うまくいっているのではないかなと思います。
野菜の性質などを考えながら自分なりの畑を作ってくださいね。
では良い菜園ライフを。
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